「東京での新生活、初期費用はたったの5万円!」
スマホの画面に踊るその文字を見たとき、地方の三流大学を卒業目前にした僕は、運命の糸が垂れてきたと感じた。
春から東京のIT企業で働くことが決まっていたが、僕には致命的な欠陥があった。
お金がないのだ。
通帳残高は、必死にバイトして貯めた15万3400円。
ネットで「東京 一人暮らし 初期費用」と検索すると、絶望的な数字が並ぶ。
「相場:50万円〜60万円」。
敷金、礼金、仲介手数料、前家賃…。さらに家具家電を揃えれば、15万円なんて秒で消える。
「でも、この広告なら…!」
僕は震える指で、とある不動産屋に予約を入れた。これが、僕が東京で最初に味わう「地獄」の入り口だとも知らずに。
第1章:不動産屋という名の「搾取装置」
週末、僕はなけなしの交通費を払って上京し、都内の不動産屋を訪れた。
「お待ちしてました! 5万円のプランですね、人気ですよ〜」
担当者は満面の笑みで迎えてくれた。紹介された部屋も悪くない。「これならいける!」と舞い上がった僕に、彼は一枚の見積書を差し出した。
【見積書合計:286,000円】
「…はい?」
時が止まった。5万円じゃないのか?
僕の動揺をよそに、スタッフは事務的にペン先で項目を指した。
「広告の5万円は『敷金・礼金』の部分ですね。これとは別に、仲介手数料、保証会社利用料、鍵交換費、火災保険、あと当社の『24時間安心サポート(2年分)』と『除菌消臭施工費』が必須になります」
- 24時間サポート:39,600円
- 除菌消臭費:22,000円
- 事務手数料:11,000円
聞いたこともない「謎のオプション」が山のように積まれている。
「詐欺じゃないですか…」と喉まで出かかったが、言えなかった。「東京ではこれが常識です」という顔をされたら、知識のない僕は黙るしかなかった。
結局、僕は「検討します」と嘘をついて逃げるように店を出た。
帰りのバスの中で、僕は理解した。
「初期費用5万円」は、客を店に呼ぶための餌だ。
釣り上げられたら最後、骨の髄までしゃぶり尽くされる。
所詮、金のない人間に東京へ行く資格なんてないんだ。僕は内定辞退のメール文面を考え始めていた。
第2章:最後の悪あがきで見つけた「バグ」
絶望の中で、僕は半ばヤケクソになってネットの海を彷徨っていた。
どうせどれも嘘だ。詐欺だ。
そう思いながらスクロールしていた指が、ある広告で止まった。
「クロスワンルーム:初期費用5万円(固定)。家具家電付き。保証人不要」
またか。どうせこれも「釣り」だろ?
僕は疑心暗鬼の塊になっていた。だからこそ、徹底的に「粗探し」をしてやろうと、運営会社のサイトや口コミを執拗に調べ上げた。
「後から高額請求された」という口コミを見つけてやる。そう思っていた。
しかし、調べれば調べるほど、奇妙な事実が浮かび上がってきた。
ここには、さっきの不動産屋のような「嘘」がない代わりに、**「明確な理由(カラクリ)」**があったのだ。
なぜ、ここだけ本当に5万円なのか?
彼ら(クロスハウス社)は、不動産業界の「常識」を無視した独自の仕組みを作っていた。
- 仲介手数料0円: 自社運営物件だから、仲介業者が入らない。
- 家具家電付き: 最初から部屋にあるから、購入費10〜20万が不要。
- 保証人不要: 独自の審査システムのため、保証会社に払う数万円も不要。
- 5万円の正体: これは敷金でも礼金でもなく、「システム料」という一律の入会金。だから、これ以上の初期費用はかからない。
「…もしかして、これならいけるのか?」
さらに、僕の心を掴んだのは**「来店不要」**という点だ。
WEB完結で契約できるから、もう一度東京に行って交通費を使う必要もない。
ただし、強烈な「トレードオフ」もある。
正直に書こう。ここはメリットばかりではない。
- 「友人を部屋に呼んではいけない」(セキュリティと騒音防止のため徹底されている)
- 「壁が薄い物件もある」(防音性は高くない)
- 「共益費は少し高め」(水道光熱費などが含まれる場合が多いが、月々の固定費は確認が必要)
普通の賃貸ならデメリットだろう。だが、地獄を見た僕には、それが「誠実さ」に見えた。
「うちはサービスを削ってコストを下げています(LCCみたいなものです)」と正直に言われている気がしたからだ。
友達なんて呼べなくていい。東京に行けるなら、それくらいの代償は払う。
僕は震える手で「申し込み」ボタンを押した。
第3章:上京、そして真実
審査はスマホだけで完結し、驚くほどあっさりと通過した。
引越し当日。僕はスーツケース一つで新幹線に乗った。家具も家電も向こうにあるから、引越し業者すら頼んでいない。
指定されたアパートの前に立ち、スマホで鍵を開ける。
ドアを開けると、そこには──
本当に、ベッドがあった。冷蔵庫も、テレビも、電子レンジもあった。
追加請求のメールは来ていない。
通帳の残高は、まだ10万円近く残っている。
「…勝った」
誰もいない部屋で、僕は小さくガッツポーズをした。
50万円の壁に跳ね返され、悪徳業者の餌食になりかけた僕が、たった5万円という裏ルートを使って、東京という要塞に潜入成功した瞬間だった。
結論:その5万円は、夢へのファストパスだ
今、僕は東京で働いている。
実際に住んでみて、確かにキッチンは狭いし、隣の生活音が聞こえることもある。
でも、毎月高い家賃や借金返済に苦しむこともなく、自分の力だけで生活できているという自信がある。
もしあなたが今、「お金がないから上京できない」と諦めかけているなら、あるいは「安い物件広告に騙された」と傷ついているなら、これだけは伝えたい。
すべての「5万円」が嘘なわけじゃない。
仕組みさえ理解すれば、この**「クロスワンルーム」**のように、資金不足を一発で逆転できる手段は存在する。
50万円貯まるまで待つ必要はない。
その1年、2年という時間は、若いあなたにとって50万円以上の価値があるはずだ。
まずはここから始めればいい。ここを拠点にお金を稼いで、いつか理想のマンションに引っ越せばいい。
これは、夢への「ファストパス」だ。
さあ、嘘だらけの広告に消耗するのはもう終わりにして、本物の鍵を手に入れよう。
あなたの東京生活は、5万円あれば、来月からでも始められるのだから。
